top of page

監訳・翻訳した書籍紹介

 

 

​Synesis シネシス
― 生産性、品質、安全、信頼性を統合した組織の変化マネジメント ―
原題 Synesis

【著者】 エリック・ホルナゲル

訳】 北村 正晴/狩川 大輔/高橋 信

本体価格 : 2,970円
体裁 : A5判・204頁
ISBN : 978-4-303-72999-8
発行・発売 : 海文堂出版株式会社

 今日、大規模な組織、企業、社会機関の複雑化が進んでおり、モノリシックな思考に基づくマネジメントアプローチでは対処が困難になっている。ほとんどの業界やサービスの組織は、生産性、品質、安全など、単一の観点から(または組織のサイロに存在する別々の視点から)パフォーマンスを見ている。品質は安全とは別に扱われ、生産性とも別に処理される。サイロ化された思考は短期的には便利かもしれないが、特定の視点からだけでは、何が起こっているかの一部しか明らかにされないことを認識すべきである。変化をマネジメントし、組織がその業務において優れていることを確かなものとするためには、組織がどのように効果的に機能するかについて統合的な視点を持つことは欠かせない要件である。
 シネシスは、組織が意図したとおりに活動を遂行するために必要な優先順位、視点、および実践行動の相互に依存する集合を表す。このシネシスは、変化マネジメントのパラダイムを特徴づける関心対象、視野、および時間の断片化を克服する方法を示している。この本は、生産性、品質、安全、信頼性を個々に独立した課題としてではなく、これらすべてをまとめて考察し、なぜそれらを統合して扱うべきか、実際にそれをどのように行うかについても述べる。(序文「シネシス」より)

ノンテクニカルスキルの訓練と評価.jpg
​ノンテクニカルスキルの訓練と評価
― 実践的指針 ―
原題 Training and Assessing Non-Technical Skills

【著者】 マシュー・トーマス

【監訳】 北村 正晴/小松原 明哲

​【訳】  中西 美和/前田 佳孝

本体価格 : 3,960円
体裁 : A5判・304頁
ISBN : 978-4-303-72995-0
発行・発売 : 海文堂出版株式会社

 安全が重視される業務では、現場員は専門的な技術、すなわちテクニカルスキルに関しては、十分に訓練され、一定のスキルレベルに達した人間が実務を担当する。要求レベルに達していることを評価し、認定がなされ、免許が与えられる場合もある。航空機のパイロットや列車の運転士、火力発電所や原子力発電所、化学プラントなどの運転員、医師や看護師など、テクニカルスキルのレベルを認定する方式はあらゆる分野で見られる。このスキルレベルの認定方式は、社会の安全性向上に大きな役割を果たしてきた。しかし、テクニカルスキルのレベルが高いだけで十分に安全が維持できるだろうか、と改めて考えてみたい。現場業務の実態に目を向けるならば、状況認識、意思決定、コミュニケーションとチームワーク、タスクマネジメントなど、本書で解説する重要なスキル、すなわちノンテクニカルスキルもまた、安全の実現に大きな役割を果たしていることが理解できよう。

 日本でもノンテクニカルスキルの重要性が認識され始めており、ノンテクニカルスキルをタイトルに含んだ書籍もいくつか刊行されている。しかしながら、ノンテクニカルスキルを効果的に訓練するためのプログラムの開発と運用・評価のための実践的指針を学術的根拠とともに示した体系的かつ領域横断的解説書は筆者の知る限り見当たらない。このため、多くの産業分野では、それぞれの分野固有の経験を踏まえて、訓練に試行錯誤を重ねている場合が多い。本書はこのような面で苦労している実務家にとって、多くの参考となる知見を提示している。

72986.jpg
​Safety-Ⅱの実践
レジリエンスポテンシャルを強化する
原題 Safety-Ⅱ in Practice

【著者】 エリック・ホルナゲル

【監訳】 北村 正晴/小松原 明哲

本体価格 : 2,700円
体裁 : A5判・196頁
ISBN : 978-4-303-72986-8
発行・発売 : 海文堂出版株式会社

 Safety-Ⅱは、受け入れがたい災厄からの開放と定義される。そのため伝統的な安全マネジメントの目標は、この「開放」を確実にする方法を見いだすことに置かれる。しかし、社会技術システムは着実に、より大きく、しかもその扱いが容易ならざるものになってきており、この「開放」を目指すことはいっそう困難になっている。事象や事故を阻止すること以上に、レジリエントなパフォーマンス -期待された状況のみならず、想定外の事態においても必要とされる機能を果たすための組織の能力- が必要とされていることを、レジリエンスエンジニアリングは初期の段階から指摘している。それは、安全の新しい解釈(すなわちSafety-Ⅱ)、そして新しい姿の安全マネジメントへと発達を遂げてきた。

 Safety-Ⅱは、保護的な安全、つまり物事はどのようにうまくいかなくなるのかという関心から、生産的な安全、つまり物事はどのようにうまくいくのかという関心へと、安全マネジメントを変革したのである。Safety-Ⅱの狙いは、単なるハザードの削減、失敗や不具合の防止ではなく、組織のレジリエンスパフォーマンスのポテンシャルを最も高めることにある。そのポテンシャルとは、対処、監視、学習、予見のしかたであり、Safety-Ⅰの手法群を越えるモデルと方法を必要とする。本書では、Resilience Assessment Grid (RAG)と呼ばれるSafety-Ⅱのマネジメントのためのわかりやすいアプローチを紹介し、その原理と、レジリエンスポテンシャルを高めるためにどのように用いることができるのかを説明する。RAGは、どのような組織にも適用できる形成的な診断的質問を4セット提供する。それらの質問は、レジリエンスエンジニアリングの原理に基づくと同時に、いくつかの実務領域における実際的な経験によって裏付けられたものとなっている。

 本書は安全の専門家と研究者に向けたものである。専門家に対しては、Safety-Ⅱをマネジメントする有用な方法(RAG)を、検証された実績とともに提供する。研究者および学生に対しては、レジリエンスエンジニアリングの簡潔で実践的な要点を与えるものである。 

レジリエンスエンジニアリング 応用への指針
レジリエントな組織になるために
原題 BECOMING RESILIENT

【編著】 Christopher P. Nemeth

           Erik Hollnagel       

【監訳】 北村 正晴

本体価格 : 3,800円
体裁 : A5判・209頁
ISBN : 978-4-8171-9632-3
発行・発売 : 株式会社日科技連出版社の場所

<レジリエンスエンジニアリングの現場での実践事例と応用への指針>
本書は、レジリエンスエンジニアリングを現場で実践した事例を数多く紹介することで、その取組みの指針を示しています。具体的には、自然災害対応、ガス供給インフラ、医療、情報システム、建設、鉄道、9.11テロからの復旧などにおいて、どのようにレジリエンスエンジニアリングの考えを応用・実践したかを解説しており、これらの事例からレジリエンスエンジニアリングを産業の現場にどのように取り込むか、その示唆が得られる内容となっています。

<レジリエンスエンジニアリングとは>
失敗や故障に着目し、その原因を取り除くことで安全性の向上を目指す従来の方法論とは異なり、システムがさまざまな外乱や不確実さの影響を受けていながらも、それらを乗り切って動作を継続している理由を探求することを通じて安全性を高める方法論。

Safety-Ⅰ& Safety-Ⅱ 安全マネジメントの過去と未来
 原題 Safety-Ⅰ and Safety-Ⅱ

【著者】 エリック・ホルナゲル

【監訳】 北村 正晴/小松原 明哲

本体価格 : 2,700円
体裁 : A5判・203頁
ISBN : 978-4-303-72985-1
発行・発売 : 海文堂出版株式会社

「安全とはどのように定義されるべきなのだろうか」 という素朴な問いが、本書の出発点になっている。日常的には 「安全とは危険がないこと」 のように、望ましくないことの存在を否定する形で定義されることが多い。最近では 「リスク」 という概念を媒介にして、「安全とは受け入れられないような(高い)リスクがないこと」 のような定義も用いられているが、否定形であることは同様である。この定義からは、危険やリスクにつながる要因を除去していけば、高いレベルの安全が実現できるという考え方が導かれることになる。
 この考え方は直観的に自然であり、とくに疑問を持つ必要はないように思われる。実際に安全のレベルが低く事故が多発していた時代、また対象とするシステムが単純であった時代には、この考え方に沿った対策をとることで対象とするシステムの安全レベルは確実に向上した。しかし現代社会において、果たしてこの考え方は通用するだろうか? 事故はあるとはいえ、業務量と相対してみれば、その発生率は激減してきている。しかも一方では、対象とするシステムの複雑さは飛躍的に増大しているのである。現代社会の安全を考えるに際しては、これらの実態に目を向けてみることが必要である。
 製造、鉄道、航空、医療、金融など、現代のあらゆる実務分野は、コンピュータや通信に依存した複雑なシステムを用いて、時に(あるいは常に)生じる再現性のない状況においては人々が臨機に対応を取ることで、業務が進行している。このようなシステムは社会技術システムと名付けられている。本書の著者であるエリック・ホルナゲル(Erik Hollnagel)教授は、社会技術システムで生じる事故やトラブルは、危険やリスクにつながる要因を取り除くという従来の方策だけでは避けきれないことに目を向けた。それを彼は 「うまくいかなくなる可能性を持つこと(Things that might go wrong)」 を取り除くのではなく、「うまくいくこと(Things that go right)」 の理由を調べ、それが起こる可能性を増大させることと要約する。そして前者の安全方策をSafety-I、後者の安全方策をSafety-IIと定義し、現代社会でのSafety-IIの必要性を主張している。
 ホルナゲル教授はSafety-Iを否定はしていない。Safety-Iが必要なシステムは、現実には存在している。ただし、当たり前のことのように参照されているいくつかの考え方が、「神話」 ではないかという指摘(第4章)は注目に値しよう。因果律という考え方、ハインリッヒが提唱したとされる事故のピラミッド、ヒューマンエラーの扱い方、根本原因分析の陥りやすい罠などに関して示唆に富む考察が示されている。Safety-Iが適切になされるための留意事項の指摘としても重要である。

実践レジリエンスエンジニアリング
社会・技術システムおよび重安全システムへの実装の手引き
原題 Resilience Engineering in Practice : A Guidebook

【編著】 Erik Hollnagel , Jean Paries ,

           David D.Woods ,  John Wreathall

【監訳】 北村 正晴 , 小松原 明哲

本体価格 : 4,400円
体裁 : A5判・331頁
ISBN : 978-4-8171-9500-5
発行・発売 : 株式会社日科技連出版社の場所

 「受け入れ難いリスクが存在しないこと」という従来の安全の考え方では、十分な効果が得られない状況が多々生じ、新しい安全へのアプローチが求められています。

 レジリエンスエンジニアリングはその答えであり、「安全は変化する条件下で成功する能力」との考えのもと、その推進に必要な4つの能力

①事象に対処する能力

②進展しつつある事象を監視する能力

③未来の脅威と好機を予見する能力

④過去の失敗・成功双方から学習する能力

が重視されます。

 本書は、それらをどのように実装すればよいか、その具体例を示した実務家への手引書です。さらなる安全・安心を担う方々への必読書といえるでしょう。

レジリエンスエンジニアリング
概念と指針
原題 Resilience Engineering : Concepts and Precepts

【編著】 Erik Hollnagel , David D.Woods ,

           Nancy Leveson    

【監訳】 北村 正晴

本体価格 : 4,800円
体裁 : A5判・381頁
ISBN : 978-4-8171-9455-8
発行・発売 : 株式会社日科技連出版社

 本書は、2004年に行われたレジリエンスエンジニアリングシンポジウムの参加者が中心となって、それぞれの立場から寄稿した論文集です。レジリエンスエンジニアリングの考え方は、社会の中で活動を続ける組織や技術システムが状況の変化によらず活動できることであり、想定外の場合も含んでいます。2011年3月に発生した東日本大震災では、レジリエンスがあるか否かが組織やシステムの命運を左右しました。福島第一原子力発電所の問題はうまくいかなかった例といえるでしょう。

 レジリエンスエンジニアリングは学術分野としてまだ十分に確立されておりませんが、安全問題に関して、人間をエラーの発生源とみなしたり、過去のエラーを分析することで将来の事故を防ごうとしてきた従来のアプローチに対する貴重な補完的考え方として急速に認められつつあります。

bottom of page